継続は力こぶ

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AmazonPrimeVideoが中心ですが、実話やヒューマンドラマなど、心に響く映画の感想や紹介をさせて頂きます

「THE UPSIDE /最強のふたり」友情が人生を動かす。

THE UPSIDE /最強のふたり

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主演:ケヴィン・ハートブライアン・クランストンニコール・キッドマン

 

あらすじ/背景

2011年に公開されたオリジナルのフランス版「最強のふたり」がハリウッドでリメイクされた本作。大まかなあらすじは、実在する体が不自由な大富豪フィリップと彼の介護をする貧しい黒人青年デルの友情を描いています。

フランスでは歴代観客動員数3位を記録し、世界中で大ヒットをしたことでハリウッドでリメイク版の製作が噂されていたが、当初の製作会社がセクハラ・性的暴行によって逮捕されたハーヴェイ・ワインスタインが設立したワインスタイン・カンパニーであったことから、『The Upside』の公開日は延期となっていたとのこと。

そしてオリジナル版の公開から約8年後に『The Upside』が公開された(FRONTROWより引用)

 

実業家フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ

実在のフランス人実業家のフィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴを長きに渡って介護したアブデルとの友情を描いた本を出版したことで映画化されてます。

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前科者と富豪の出会い

刑務所から出所したデルは妻や息子から見放されており、働く気もなく失業手当を目的に署名活動を行っていた。

面接の待ち時間が長く、順番が待てずに割り込むデル。ここでデルを見たフィリップは、いつもの面接者とは違う雰囲気を感じとり、署名するから明日取りに来いと伝える。

デルの生活背景と二人の出会いを描いています。

 

介護の仕事

デルが一晩考えて仕事することを決意。DNR(蘇生処置拒否)の指示に同意し、介護を始めて四苦八苦するデル。

理学療法士のマギーから関節可動域訓練やカテーテルの交換などを指導されます。

尿道カテーテルの交換ではデルが嫌がりながらも行う姿は微笑ましく感じました。理学療法士カテーテルの交換をしている場面は驚きです…

私は作業療法士ですが、できません。

というか、尿道カテーテルの処置は看護師の領域なのでやりません。行うことができるのは医師、看護師、指導を受けた患者本人や患者家族のみとなります。

 

DNR(蘇生処置拒否)とは?

DNRってご存知でしょうか?医療に関わったことのある人は知っていて当然のワード。

DNRとは患者が指示した場合、蘇生処置を行ってはいけないことを意味しています。蘇生処置とは人工呼吸や胸骨圧迫、電気ショックなどに当たります。

以下に詳細を載せておきます。

蘇生措置拒否とは、終末期医療において心肺停止(CPA)状態になった時に二次心肺蘇生措置(ACLS)を行わないこととされる。DNR、DNAR、DNACPRなど略称がある。原則として行われる蘇生措置をあえて行わないため、患者と家族の明確な意思表示が要件となる。

原則的に患者およびその家族のQOL(生活の質)を改善するためのアプローチである。処置を行う間に家族が患者を看取る最後の大切な時間を失う、などの理由から、患者の負担と看取りにおける家族の悲嘆の緩和が目的である。

Wikipediaより引用)

 

関節可動域訓練

こちらはリハビリに従事している方、特に理学療法士が行う関節を動かす治療です。

今回のフィリップに関しては首から下が完全麻痺しているため、自身では動かすことが出来ず、感覚も全くない状態です。

そこで関節が硬くならないように毎日動かすことが重要になります。硬くなってしまうと、ベッドや車椅子への乗り移りや先体、着替えなど介助者の負担が増えてしまいます。

 

尿道カテーテルの挿入

脊髄損傷の場合、排尿障害により自力にて排尿ができなくなります。そのため尿道カテーテルを挿入し膀胱から導尿する必要があります。

脊髄損傷だけに限らず、前立腺肥大など何かしらの原因で排尿障害がある場合や手術や絶対安静の時も使用します。

 

フィリップの悩み

フィリップの日常は朝から音楽を聴き、理学療法士による訓練や介護を始めたデルに手伝ってもらいながら書類をチェックする仕事をしたり、外出して妻の好きだった絵画を集めたりしていた。

そんな彼は四肢麻痺の原因になったパラグライダーの落下と妻の死の夢に苛まれていたのだった。

悪夢にうなされ、呼吸困難になったり、神経因性による足の痛みに苦しむ描写もありました。

 

神経因性疼痛とは?

字の通り神経に起因する痛みのことを言います。感覚が非常に敏感になり、主に灼熱痛やチクチク感を感じることが多いようです。軽く触れられただけで痛みを感じることもあります。

詳しくは以下に記載します。

神経障害性疼痛は、痛覚受容器への刺激ではなく、末梢または中枢神経系の損傷または機能障害によって発生する。診断は組織損傷と釣り合わない疼痛、異常感覚(例、灼熱感、チクチク感)、および神経学的診察で検出される神経損傷の徴候から示唆される。神経障害性疼痛オピオイドに反応するが、鎮痛補助薬(例、抗うつ薬、抗てんかん薬、バクロフェン、外用薬)を併用することが多い。

(MSDマニュアルプロフェショナル版より引用)

 

リリーとの文通

1年の間顔も知らない相手と文通をしていたフィリップ。その相手の名前はリリー。

イボンヌが手紙の代筆をしていると、デルが手紙に書いてあった番号に電話をかけてしまったことで、フィリップが仕方なく留守電に伝言を残し食事に行くことになります。

慎重に進めたかったためか、フィリップにとっては急展開過ぎて唖然…

不安そうなフィリップにイボンヌが大人の女性として言った言葉がものすごく印象的でした。

 

賢い女性には頭と心が大事

    彼女を動かすのは手ではない〟

 

長きに渡り、秘書として寄り添ってきたイボンヌが言うことで言葉の深みを感じます。

フィリップののとを一番分かっているのはイボンヌではないでしょうか。

 

二人は無事に食事はするものの順調に進んでるかのように思えましたが、徐々にリリーの態度や言葉に変化がみられます。フィリップはそんな変化を感じとり、その場を離れてしまう。「私なりの付き合い方を君は奪った」とデルに当たってしまいクビにしてしまいます。

 

運命の人

フィリップの元を離れたデルは、Tremont mobilityという車椅子製造会社で働きます。

フィリップはデルのいない介護に自暴自棄になってしまいます。少しずつ無気力になってしまうことでイボンヌも出て行ってしまいます。

そんなデルの元に理学療法士のマギーがフィリップの状態を伝え、助けを求めに来ます。

デルは車を走らせ、パラグライダーが飛んでる丘へ。そして、フィリップとデルの二人は様々な思いを抱き、大空へ飛び立つのでした。

 

そして〝楽しみはこれからだ〟と告げ、その場を去るデル。フィリップの肩に手を添えるのは…出て行ったイボンヌでした。

イボンヌを見て「会いたかった」と涙を流し、笑顔で語るのを見送るのでした。

 

個性がぶつかった二人

やはりオリジナル版やハリウッド版共に言えると思いますが、個性がぶつかる二人が生み出すユーモアさが、この映画の良さを醸し出してますね。

デルの行動は度が過ぎてると思いがちですが、自分がやりたいと思ったこと、フィリップが求めてることを真っ直ぐこなし、フィリップに影響されて絵を描いたり、アプリを考案しようとしたり、デルの純粋さが伝わってきますね。

四肢麻痺の人に麻痺の原因になったパラグライダーをやらせますか??そんな粋なことをする人柄に惚れました。きっとフィリップは悪夢から解放されたと思います。相手が何を求めているか捉えることって大事なことですね。

 

オリジナル版との違い

ここでオリジナル版の大まかな設定を下記に記載します。

・ドリスが家族ではなく弟のことで悩んでいる

・アシスタントのマガリーに好意を抱く

・フィリップに娘がいる

・食事を約束するも逃げ出してしまう

・ラストの運命の人は文通相手のエレノア

オリジナル版との違いに関しては細かいところはまだありますが、主に上記が違う箇所だと思います。ラストシーンではリリーではなく、イボンヌが来た時はハリウッド版ならではのアレンジでしょうか、「フィリップ良かったね」と自然と笑顔になりました。

今回のハリウッド版はアレクサやアプリなど現代風にアレンジされていて見やすさはありました。

 

最後に

こちらがフィリップとアブデルご本人です。

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オリジナル版からですが、フィリップは現在モロッコに在住しており、再婚して二人の娘の父となっており、ドリスのモデルになったアブデルは会社の社長になり、結婚して3人の子の父となっているとのこと。

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二人はまだ強い絆で結ばれている。

 

 

オリジナル版予告編はこちら